「このサーバーは仮想マシンです」「仮想化技術を使っています」
ITの現場で当たり前のように使われる「仮想化(Virtualization)」という言葉。
「VR(バーチャル・リアリティ)のこと?」と思うかもしれませんが、少し違います。
これは、物理的に1台しかないコンピュータの中に、論理的(ソフト的)に複数のコンピュータを作り出す技術のことです。
映画『マトリックス』や『インセプション』のように、現実世界の中にもう一つの夢の世界を作るイメージです。
この記事では、なぜそんな面倒なことをするのか、そしてAWSなどのクラウドとどう関係しているのかを解説します。
1. 仮想化=「お化け屋敷の仕切り」
例えば、あなたが巨大な体育館(高性能なサーバー)を1つ持っているとします。
でも、使いたいのは小さな部屋(普通のWebサーバー)3つ分です。
体育館をそのまま使うのは、電気代も場所も無駄すぎますよね。
そこで、体育館の中に「パーティション(仕切り)」を立てて、3つの部屋に区切って使います。
これが仮想化のメリットです
- 物理マシン(体育館):1台で済むので、購入費や電気代が激減する。
- 仮想マシン(仕切った部屋):中からは「自分は独立した部屋だ」と思っている。隣の部屋の声(エラー)は聞こえない。
外から見れば「1台の巨大な機械」ですが、中身は「Windowsサーバー」「Linuxサーバー」「データベースサーバー」が別々に動いている。これが仮想化です。
2. 試験に出る!2つの仮想化方式
ITパスポートや基本情報技術者試験では、「どうやって仕切りを作るか?」という方式の違いが必ず出題されます。
① ホストOS型(手軽だけど遅い)
今あるWindowsなどのOSの上に、アプリとして仮想化ソフトを入れる方法です。
- 構造:ハードウェア → Windows(親) → 仮想ソフト → Linux(子)
- イメージ:大家さん(親OS)の家に、下宿人(子OS)が住まわせてもらっている状態。
- 特徴:手軽に試せるが、親OSの処理も重なるため動作が遅い。
- ソフト例:VirtualBox、VMware Workstation
② ハイパーバイザ型(速い!企業の主流)
OSを挟まず、ハードウェアの上に直接「仮想化専用ソフト(ハイパーバイザ)」を入れる方法です。
- 構造:ハードウェア → ハイパーバイザ → Windows(子) / Linux(子)
- イメージ:更地の上に、専用のマンションを建てて、全員が対等な入居者として住む状態。
- 特徴:無駄な親OSがいないので、動作が非常に速い。
- ソフト例:Hyper-V、VMware ESXi、Xen
試験対策ポイント
「既存のOS上で動く」ときたらホストOS型。
「ハードウェア上で直接動く」ときたらハイパーバイザ型です。
3. クラウド(AWS)の正体は「巨大な仮想化」
Amazonが提供する「AWS」や、Googleの「GCP」といったクラウドサービス。
これらは一体何なのでしょうか?
正体は、「データセンターにある超巨大な物理サーバーを、仮想化技術で細かく切り売りしているサービス」です。
あなたがAWSで「サーバーを1台契約」ボタンを押すと、Amazonの巨大なコンピュータの中に、あなた専用の「仮想マシン(インスタンス)」が一瞬で作られます。
物理的にサーバーを買ってくる必要はありません。
仮想化技術があるからこそ、私たちは必要な時に必要な分だけ、ネット経由でコンピュータを借りることができるのです。
4. シンクライアント(VDI)とは?
最近、セキュリティ対策で導入が進んでいる「VDI(デスクトップ仮想化)」についても触れておきましょう。
会社のデスクにあるパソコンには、Windowsもデータも入っていません(空っぽ)。
画面とキーボードだけが付いています。
ではどこで動いているかというと、本社のサーバーの中にある「あなたの仮想パソコン」を、遠隔操作しているだけなのです。
メリット:
- もしパソコンを電車に置き忘れても、中身は空っぽなので情報漏洩しない。
- 自宅のPCからでも、会社のサーバーに接続すれば、いつものデスクトップ画面が開ける(テレワーク)。
これも「仮想化」の応用技術の一つです。
5. コンテナ型(Docker)の登場
さらに進んだ技術として、最近は「コンテナ(Docker)」が流行っています。
これまでの仮想化は「OSごと」丸々コピーして作っていましたが、コンテナは「OSはみんなで共有して、アプリの部分だけ個室にする」という技術です。
「マンション(仮想マシン)」から「カプセルホテル(コンテナ)」に進化したと思ってください。
めちゃくちゃ軽くて起動が速いので、メルカリやLINEなどのWebサービス開発ではこちらが主流になっています。
まとめ
- 仮想化は、1台の物理マシンを複数の論理マシンに見せる技術。
- ハイパーバイザ型は、ハードウェアの上で直接動くので速い。
- クラウドの実体は、仮想化されたサーバーの貸し出し。
目に見えるパソコンの筐体(ハードウェア)と、画面の中のOS(ソフトウェア)は、もう1対1の関係ではありません。
「この画面は、どこかのデータセンターにある仮想空間から届いているんだな」
そう意識できるようになれば、あなたはもうクラウド時代の入り口に立っています。