仮想マシンとコンテナとは?大事なところだけ解説!

今回は、仮想化技術の代表例である仮想マシンとコンテナについて解説します。

クラウドを支える技術とは?大事なところだけ解説!

仮想マシンとは

仮想マシン(VM)は、物理マシンの上に別の仮想的なコンピュータを構築する技術です。この仮想環境は、ホストOSと呼ばれる基盤のオペレーティングシステム上で動作し、ハイパーバイザーというソフトウェアによって管理されます。ハイパーバイザーは、物理リソース(CPU、メモリ、ストレージなど)を仮想マシンに分配し、それぞれ独立した環境を提供します。

仮想マシンの特徴は、完全に独立したOSが動作する点です。そのため、異なるOSを同一ホスト上で実行することが可能であり、例えばWindowsホスト上でLinuxを動作させるといったことができます。この独立性により、高いセキュリティと柔軟性を提供します。

仮想マシンの構成

ハイパーバイザー

ハイパーバイザーは、仮想化を実現するソフトウェアであり、物理的な仮想マシンに分配します。

仮想マシンのゲストOS

仮想マシン上には、ゲストOSがインストールされます。これにより、仮想マシンはホストOSと全く異なるOSを動作させることが可能です。例えば、Windows上にLinuxをインストールして動作させることが出来ます。

仮想ハードウェア

仮想マシンは、仮想的なCPU、メモリ、ストレージ、ネットワークアダプタなどのハードウェアリソースを持ちます。これらのリソースは、実際の物理マシンと同様に動作しますが、ホストOSによって仮想化されています。

メリット

異なるOSの共存

仮想マシンを使用することで、同一の物理マシン上で複数の異なるOSを並行して運用できます。例えば、WindowsとLinux、あるいは異なるバージョンのOSを一台のコンピュータで実行することが可能です。これにより、開発やテスト環境で異なるOS間での比較や互換性確認が容易になります。

セキュリティと隔離

各仮想マシンは、完全に隔離された環境として動作します。そのため、仮想マシン内での問題(セキュリティ脆弱性や故障など)がホストOSや他の仮想マシンに影響を与えることはありません。この隔離性は、特にセキュリティや安定性が重要な環境で大きな利点となります。

バックアップ

仮想マシンは、仮想ディスクとしてディスクイメージが保存されるため、バックアップや復元が簡単です。仮想マシンの状態を保存しておけば、障害発生時に迅速に復旧することができます。

デメリット

リソースオーバーヘッド

仮想マシンは、仮想化レイヤーを介してリソースにアクセスします。これにより、物理的なハードウェアに直接アクセスするよりもパフォーマンスが低下することがあります。特に、CPUやメモリなど、リソースが限られている環境では、仮想化のオーバーヘッドが顕著に影響を与える場合があります。

起動時の遅延

仮想マシンは、ハイパーバイザーを介して起動するため、物理マシンに比べて起動時間が長くなることがあります。特に、仮想マシンが多くなると、それぞれの起動に時間がかかり、システムの立ち上げに遅れが生じる可能性があります。

ストレージ容量の消費

仮想マシンは、個々の仮想ディスクを使用しますが、これらのディスクイメージが大きくなりやすく、ストレージ容量を多く消費することがあります。また、複数の仮想マシンを同時に運用する場合、ストレージの管理が難しくなることがあります。

コンテナ

コンテナは、ホストOSのカーネルを共有しながら、アプリケーションとその依存関係を分離して実行する技術です。DockerやKubernetesといったツールがこの分野で広く利用されています。コンテナは軽量で起動が迅速なため、開発から本番環境への移行をスムーズに行える点が特徴です。

コンテナは、ホストOS上で単一のカーネルを使用し、その上に複数のコンテナを実行することでリソースを効率的に活用します。これにより、同一環境で複数のアプリケーションを実行しつつ、相互に干渉しない状態を保つことができます。

コンテナの構成

ホストOS

コンテナはホストOS上で動作しますが、ホストのカーネルを共有するため、仮想化のオーバーヘッドは最小限です。ホストOSはコンテナのリソース管理を行います。

コンテナエンジン

コンテナを作成、実行、管理するためのソフトウェアで、代表的なものにDockerがあります。コンテナエンジンは、アプリケーションの依存関係とともにコンテナを作成し、隔離された環境で実行します。

コンテナイメージ

コンテナは、アプリケーションとその依存関係を含んだ「コンテナイメージ」を基に作成されます。これにより、開発環境と本番環境の間で一貫性が保たれます。コンテナイメージは、イメージリポジトリ(Docker Hubなど)に格納され、必要に応じてダウンロードされます。

オーケストレーションツール

Kubernetesなどのオーケストレーションツールを使用すると、コンテナのスケーリング、管理、配置を効率的に行うことができます。これにより、コンテナ環境の運用が自動化され、複雑なシステムの管理が容易になります。

メリット

軽量で高速

コンテナは仮想マシンに比べてオーバーヘッドが少なく、リソースの効率的な利用が可能です。コンテナはホストOSのカーネルを共有するため、仮想マシンのようにOS全体を仮想化する必要がなく、起動が迅速です。これにより、CI/CD(継続的インテグレーションとデプロイメント)の効率化が進みます。

リソースの効率的利用

同一ホストOS上で複数のコンテナを効率的に動作させることができるため、リソースを最大限に活用できます。これにより、クラウド環境でのスケーリングが容易になり、コスト削減につながります。

一貫性と移植性

コンテナ内で実行されるアプリケーションは、開発環境から本番環境まで同じ依存関係を持つため、環境間の不一致が減少し、開発から本番への移行がスムーズになります。これにより、環境依存によるバグやトラブルが軽減されます。

迅速な起動とスケーリング

コンテナは非常に高速に起動し、スケーリングも簡単です。必要な数のコンテナを素早く起動でき、負荷に応じて動的にスケーリングできます。この特性は、特にクラウドサービスにおいて大きな利点です。

デメリット

セキュリティ

コンテナはホストOSのカーネルを共有するため、仮想マシンほどの完全な隔離性を提供できません。もしコンテナにセキュリティ脆弱性があれば、ホストOSや他のコンテナに影響を与える可能性があります。ホストOSとカーネルを共有するという性質上、セキュリティリスクがある点は注意が必要です。

リソース制限

コンテナはリソースを効率的に利用する一方で、物理マシンのリソースをオーバーコミットすることがあります。過剰にコンテナを実行すると、メモリやCPUの競合が発生することがあり、パフォーマンスの低下を招く可能性があります。

仮想マシンとコンテナの違い

仮想マシン(VM)とコンテナはどちらも仮想化技術であり、リソースの効率的な利用や柔軟な環境の構築を目的としていますが、それぞれが異なる仮想化アプローチを取っているため、いくつかの重要な違いがあります。これらの違いは、主に仮想化のレベル、アーキテクチャ、リソース管理の方法に関連しています。

仮想化のアーキテクチャの違い

仮想マシンのアーキテクチャ

仮想マシンは、ハードウェアレベルで仮想化を行い、物理サーバーのリソースを仮想化することで複数の仮想環境を提供します。仮想マシンは、ホストOS(通常は仮想化を管理するソフトウェアであるハイパーバイザー)と、ゲストOS(仮想マシン内で動作する独立したオペレーティングシステム)から構成されます。仮想マシンは、完全に独立したOSを必要とし、これにより複数の異なるOSを同一の物理ホスト上で動作させることが可能です。

コンテナのアーキテクチャ

コンテナは、OSレベルで仮想化を行います。コンテナは、ホストOSのカーネルを共有し、アプリケーションとその依存関係を隔離して実行します。これにより、コンテナは軽量で、仮想マシンよりも効率的にリソースを利用することができます。コンテナは、OSのカーネルを共有するため、ホストOSが提供するリソースをそのまま利用する形となり、仮想化オーバーヘッドが最小限に抑えられます。

セキュリティと独立性

仮想マシンのセキュリティ

仮想マシンは、完全に独立したOS環境を提供するため、セキュリティ的には非常に高い隔離性を保つことができます。仮想マシンごとに独立したOSが動作しているため、一方の仮想マシンで発生したセキュリティインシデント(例:マルウェア感染)が他の仮想マシンやホストOSに影響を与えるリスクは低く、高いセキュリティが要求される環境に適しています

コンテナのセキュリティ

コンテナはホストOSのカーネルを共有するため、仮想マシンほどの隔離性はありません。コンテナ内で発生したセキュリティ問題が、ホストOSや他のコンテナに影響を及ぼす可能性があるため、セキュリティ面では仮想マシンに劣ります。コンテナを複数実行する環境では、コンテナ間のセキュリティ隔離を強化するための追加的な対策が必要となります。

リソース効率

仮想マシンのパフォーマンス

仮想マシンは、各仮想マシンごとにOS全体を実行するため、リソース消費が大きいというデメリットがあります。仮想マシンは、CPU、メモリ、ストレージを仮想化し、各仮想マシンに割り当てるため、リソースがオーバーヘッドを引き起こし、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。また、仮想マシンの起動時間も比較的長いため、オンデマンドで迅速なスケーリングを行う場合には不向きです。

コンテナのパフォーマンス

コンテナはホストOSのカーネルを直接使用するため、仮想マシンに比べてリソース消費が少なく、パフォーマンスが高いです。コンテナはオーバーヘッドが最小限であり、迅速な起動が可能です。これにより、コンテナはリソース効率が高く、特にクラウド環境でのスケーリングや頻繁なデプロイが求められるアプリケーションに適しています

起動時間

仮想マシンの起動時間

仮想マシンはフルオペレーティングシステムを起動するため、起動には時間がかかります。仮想マシンをスケーリングする際にも、手間がかかり、時間がかかることがあります。このため、短期間でのスケーリングや迅速なリソース追加が求められる場合には、仮想マシンは不向きです。

コンテナの起動時間

コンテナは非常に軽量で、ホストOSのカーネルを共有するため、起動が非常に迅速です。コンテナは数秒以内に起動できるため、オンデマンドでのスケーリングや頻繁なデプロイが可能です。これにより、マイクロサービスアーキテクチャクラウドネイティブなアプリケーションにおいて、コンテナは非常に効率的に利用されます。

互換性と移植性

仮想マシンの互換性

仮想マシンは独立したOSを持っているため、異なるOS間での互換性が必要な場合に非常に適しています。例えば、同一の物理ホスト上で、Linux、Windows、または他のOSを同時に実行することができるため、異なるOSを扱うアプリケーションやサービスに向いています。

コンテナの互換性

コンテナはホストOSに依存しているため、異なるOSを同時に実行することはできません。Linuxホスト上ではLinuxコンテナを実行し、Windowsホスト上ではWindowsコンテナを実行する必要があります。そのため、異なるOSのアプリケーションを必要とする場合は、仮想マシンが適していると言えます。

まとめ

今回は、仮想化技術の代表例である仮想マシンとコンテナについて解説しました。それぞれ適した利用ケースがあることが分かりました。また、違いについても解説しました。

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