パソコンのスペック表で「キャッシュメモリ」という項目を見たことはありますか?
メインメモリ(8GBや16GB)とは別に、CPUの情報の近くに小さく書いてある謎のメモリです。
ITパスポート試験では、このキャッシュメモリの仕組みや「ヒット率」という計算問題がよく出題されます。
難しそうに聞こえますが、これもレストランの厨房で例えれば一瞬で理解できます。
この記事では、CPUの性能を限界まで引き出すための「手元の小皿(キャッシュメモリ)」について解説します。
1. CPUとメモリの「速度の壁」問題
これまでの記事で、以下の役割分担を解説しました。
- CPU:天才シェフ(超高速で料理する)
- メインメモリ:まな板・作業台(食材を置く場所)
実はここで、パソコンにとって深刻な問題が発生します。
「シェフ(CPU)の手が速すぎて、まな板(メモリ)から食材を取るのが間に合わない問題」です。
CPUは1秒間に何十億回も動けますが、メインメモリはそこまで速くありません。
その結果、天才シェフは「食材まだ?早くしてよ」とイライラしながら、手持ち無沙汰で待つことになります。
これを解消するために生まれたのが「キャッシュメモリ」です。
2. キャッシュメモリは「手元の小皿」
キャッシュメモリは、CPU(シェフ)のすぐ隣(あるいはCPUの中)にある、超高速な記憶装置です。
例えるなら…
まな板(メインメモリ)は、シェフから少し離れた場所にあります。
毎回そこまで取りに行くのはタイムロスです。
そこで、シェフの手の届く範囲に「小さな小皿(キャッシュメモリ)」を用意します。
ここによく使う「塩・コショウ・包丁」などを置いておけば、振り返ることなく0秒で手に取れますよね。
特徴まとめ
- 場所:CPUのすぐそば(最速)。
- 容量:とても小さい(小皿なのでたくさんは置けない)。
- 役割:メインメモリから「よく使いそうなデータ」をコピーしておく。
3. 「1次・2次・3次」キャッシュの違い
スペック表には「L1キャッシュ」「L2キャッシュ」と書かれています。
「L」はLevel(レベル)の略です。
- L1キャッシュ(1次)= エプロンのポケット
- 一番近い場所。容量は極小。絶対に使うものだけを入れる。
- L2キャッシュ(2次)= 手元の小皿
- L1の次に近い。L1に入り切らなかったものを置く。
- L3キャッシュ(3次)= 厨房のワゴン
- 少し離れているが、メインメモリ(まな板)よりは断然近い。
シェフは、まずポケット(L1)を探し、無ければ小皿(L2)、無ければワゴン(L3)、それでも無ければまな板(メインメモリ)に取りに行きます。
4. スマホの「キャッシュ削除」と同じ?
よくスマホやブラウザで「キャッシュを削除して軽くする」と言いますよね。
この「キャッシュ」と、CPUの「キャッシュメモリ」は、言葉の意味は同じですが、モノが違います。
- CPUのキャッシュメモリ:
ハードウェアの話。CPUの中にある超高速な部品。 - ブラウザのキャッシュ:
ソフトウェアの話。「一度見たWebページの画像」などを、ストレージ(冷蔵庫)に一時保存したもの。
どちらも「また使うかもしれないから、手近な場所にコピーしておこう」という仕組み(Caching)は一緒です。
「二度手間を防ぐ=高速化」というのが、ITにおけるキャッシュの基本思想なのです。
5. ITパスポート試験に出る!「ヒット率」
試験では、こんな問題が出ます。
「キャッシュメモリに必要なデータがある確率を何と呼ぶか?」
答えは「ヒット率(Hit Rate)」です。
- ヒット:小皿(キャッシュ)を見たら、欲しかった食材があった!
→ 高速で処理できる。 - ミス:小皿を見ても無かった…。まな板まで取りに行かないと。
→ 遅くなる。
「ヒット率が高い=シェフが気持ちよく料理できる=パソコンが速い」ということです。
CPUの設計者たちは、いかにして「シェフが次に欲しがるもの」を予測して、先回りして小皿に置いておくか(ヒット率を上げるか)を研究しているのです。
まとめ
- キャッシュメモリは、CPUとメモリの速度差を埋める「手元の小皿」。
- メインメモリ(まな板)より速いが、容量は小さい。
- 「よく使うデータ」を一時的に置いておくことで、処理を高速化している。
もしパソコンが「Core i7なのに遅いな…」と感じたら、もしかするとキャッシュメモリの容量が関係しているかもしれません。
見えないところでシェフを支える、名アシスタントの役割を覚えておいてください。