インターネットの世界において、最も基本的かつ重要なIDが「IPアドレス」です。
「192.168.1.1」のような数字の羅列を見たことがあると思います。
実はこのIPアドレスには、「世界で通用するやつ」と「家の中だけで使うやつ」の2種類があることをご存知でしょうか?
ここを混同していると、ネットワークの仕組みは一生分かりません。
この記事では、IPアドレスの仕組みを「マンションの住所」と「部屋番号」に例えて解説します。
1. IPアドレスは「インターネット上の住所」
手紙を届けるのに住所が必要なように、データを届けるにはIPアドレスが必要です。
コンピュータは、この数字を頼りに「Yahooのサーバー」や「あなたのスマホ」を特定しています。
しかし、世界中のすべてのスマホやPCに、別々の住所(IPアドレス)を割り当てるには、数が足りません。
そこで考え出されたのが、「グローバルIP」と「プライベートIP」という使い分けです。
2. 2つのIPアドレスの違い
① グローバルIPアドレス = 「マンションの住所」
特徴:世界に一つだけ。重複してはいけない。
インターネットという「公道」に面している住所です。
例えば、「東京都港区〇〇 1-2-3 レジデンス東京」という住所は、世界に一つしかありませんよね。
これを持っているのは、あなたの家の「ルーター(玄関)」だけです。
② プライベートIPアドレス = 「部屋番号(内線)」
特徴:家の中で自由につけていい。よその家と被ってもいい。
マンションの中にある「101号室」や「201号室」のことです。
「レジデンス東京の101号室」と、「メゾン大阪の101号室」。
建物が違えば、同じ「101号室」が存在しても問題ありませんよね?
これが、みんなの家のWi-Fi設定が「192.168…」で始まっている理由です。
「192.168…」は、「家の中で自由に使っていい部屋番号」として予約されている数字なのです。
3. ルーターの仕事は「管理人さん(NAT)」
では、家の中のスマホ(101号室)が、外のYahoo(グローバル住所)にアクセスする時、どうしているのでしょうか?
そのまま「私は101号室です!」と名乗っても、Yahooからすれば「どこのマンションの101号室だよ!」となって返事ができません。
そこで活躍するのが、玄関にいるルーター(管理人さん)です。
NAT(ナット)機能の働き
- 行き(スマホ→Yahoo)
ルーターは、スマホの「101号室(プライベートIP)」という名前を消して、「レジデンス東京(グローバルIP)」という名前に書き換えてから、Yahooへ注文を出します。 - 帰り(Yahoo→スマホ)
Yahooから「レジデンス東京宛」に返事が届きます。 - 翻訳
ルーターは、「あ、これはさっき101号室のスマホ君が頼んでたやつだな」と思い出して、宛先を「101号室」に書き戻して渡してくれます。
この「IPアドレスを変換する機能」のことをNAT(Network Address Translation)と呼びます。
これがあるおかげで、世界に一つしかない貴重な「グローバルIP」は、一家に一つ(ルーター分)だけで済むのです。
4. 「IPアドレスが枯渇した」ってどういうこと?
ニュースで「IPv4アドレスが枯渇しました」と聞いたことはありませんか?
現在主流の「IPv4」というルールでは、約43億個の住所しか作れません。
「43億個あれば十分じゃん?」と思ったのは昔の話。
今は一人でスマホ、PC、タブレット、ゲーム機を持つ時代です。世界人口80億人には到底足りません。
救世主「IPv6」の登場
そこで作られた新しいルールが「IPv6(アイピーブイロク)」です。
IPv4が「数字だけの電話番号」だとしたら、IPv6は「英数字入り混じりの超長い暗号」です。
その数は「約340澗(かん)個」。
340兆の1兆倍の1兆倍です。「地球上の砂粒ひとつひとつにアドレスを振っても余る」と言われるほどの無限の数があります。
これで住所不足の問題は解決しました。
5. まとめ
- グローバルIP:インターネット上の住所。世界で唯一。
- プライベートIP:家の中の部屋番号。「192.168…」が有名。
- NAT(ナット):ルーターが「外用」と「内用」のアドレスを書き換えてくれる機能。
「IPアドレスから住所がバレる」というのは、半分正解で半分間違いです。
バレるのは「どこのプロバイダ(NTTなど)を使っていて、大体どの地域に住んでいるか」まで。
「〇〇マンションの101号室」という個人情報までは、警察がプロバイダに照会しない限り分かりません。